ピラティスを始めた方なら一度は聞いたことがあるであろう「PHIピラティス」。でも、実際にどのような特徴があり、他の流派とどう違うのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
PHIピラティスは、単なるエクササイズではなく、医療とフィットネスの融合を目的とした革新的なアプローチを採用したピラティス流派です。理学療法士である創始者の専門的な背景が、このメソッドの大きな特徴となっています。
今回は、PHIピラティスの基本概念から具体的な特徴、他の流派との違いまで、7000文字にわたって徹底的に解説していきます。ピラティスをより深く理解したい方、インストラクター資格を検討している方にとって、きっと有益な情報になるはずです。
PHIピラティスとは何か?基本概念を理解しよう
PHIピラティスを理解するには、まず「PHI」という名前の意味から知ることが重要です。
PHIは、「Performance Enhancement International」の略で、人の機能改善とパフォーマンスアップを目指すという理念を持つ国際ピラティスという意味です。
つまり、PHIピラティスはパフォーマンス向上と機能改善を国際的な規模で支援することを目的としたピラティス教育団体なのです。
PHIピラティスの正式名称と理念
PHI ピラティスの後に”as Therapeutic Exercise & Conditioning”と続きますが、PHI Pilatesのエクササイズが病院でのリハビリテーションからトップアスリートまでを対象にすることができる本物のピラティスということを示しています。
この正式名称からも分かるように、PHIピラティスは治療的エクササイズとしての側面とコンディショニングとしての側面を併せ持つ、包括的なアプローチを特徴としています。
ジョセフ・ピラティスからの正式継承
PHI Pilatesは、Joseph H. Pilatesが考案したリハビリテーションとコンディショニングとしての『ピラティス』を、正式に継承している団体のひとつです。
PHIピラティスは、ピラティスの創始者であるジョセフ・ピラティス氏の本来の理念を現代的にアップデートした流派として位置づけられています。
PHIピラティス創始者:クリスティン・ロマニ・ルビィ氏の専門性
PHIピラティスの最大の特徴は、その創始者の圧倒的な専門性にあります。PHI Pilates創始者のChristine Romani-Ruby氏(クリスティン・ロマニ・ルビィ)は、教育学博士(D.Ed.)、MPT(理学療法修士)およびATC(NATA公認アスレチックトレーナー)等の資格を有し、自身の理学療法クリニックを運営しながらカリフォルニア大学ペンシルバニア州立大学運動科学学部の教授であり、スリッパリーロック大学理学療法学科の非常勤講師にも就任しています。
理学療法クリニックでの実践
PHI Pilates Japanの本部(米国・ピッツバーグ市)は、ルビィ氏自身の理学療法クリニックなのです。そこには牽引マシンや、電気治療などをする物療などはなく、ピラティスの道具が設置され、一般の方(子どもたちから高齢者まで)だけでなく、大学・プロのアスリートなどが連日訪れます。
この事実は、PHIピラティスが理論だけでなく実践に基づいた医療的アプローチを採用していることを示しています。
学術的な裏付け
創始者のクリスティン氏は、カリフォルニア大学にて20年以上ピラティスを研究し、ピラティスのエクササイズが姿勢矯正させることを証明した論文を発表しています。創始者のクリスティン・ロマニ・ルビィは、カルフォルニア大学で30年以上にわたる研究をおこない、ピラティスで姿勢矯正ができることを証明する論文を発表しました。
このような学術的な研究に基づいているため、PHIピラティスは「エビデンス・ベースド」なピラティスメソッドとして高く評価されています。
PHIピラティスの3つの主要特徴
1. 医療とフィットネスの融合
PHIピラティスでは、「医療とフィットネスの融合」を前面に掲げています。「オーダーメイド」の運動処方を基本に考えられているので、エクササイズの動きをただ学ぶのではなく、このエクササイズにはどのような効果があるのかといった一歩踏み込んだ内容を機能解剖学的に紐解きながら学ぶことができる資格団体です。
PHIピラティスでは、以下のような医療的アプローチが採用されています:
- 機能解剖学に基づいたエクササイズ選択
- 個別の身体状況に応じたオーダーメイド運動処方
- 症状改善を目的とした治療的アプローチ
- 予防医学的な観点からの健康増進
2. 姿勢矯正への特化
PHIピラティスの特徴は、利用者がピラティスができるようになることではなく、姿勢を矯正することを目的にしていることです。PHIピラティスでは皆それぞれが自分に合った、バラバラのフォームでエクササイズをしています。
姿勢矯正を最優先とするPHIピラティスでは、画一的なフォームではなく、個人の身体特性に合わせたエクササイズを提供します。
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不良姿勢の分類とアプローチ
PHIピラティスでは、不良姿勢を特徴別に分類して、それぞれの姿勢に合わせたエクササイズの選択の仕方を学んで行きます。そのため、目の前のクライアント様に合わせたエクササイズを組み立て、指導できるようになるため、より効果的なピラティス指導が可能になります。
3. 幅広い対象者への適応性
そのためPHIピラティスでは、日常動作が困難な高齢者からトップアスリートまでのすべての人が、自分のレベルに合ったピラティスのエクササイズを行えるのです。
PHIピラティスの適用範囲は以下のように非常に広範囲です:
対象者 | 適用目的 | 期待される効果 |
---|---|---|
高齢者 | 日常動作の改善・維持 | 転倒予防、機能維持 |
リハビリ患者 | 機能回復 | 痛みの軽減、可動域改善 |
一般成人 | 姿勢改善・健康維持 | 肩こり・腰痛の予防改善 |
アスリート | パフォーマンス向上 | 競技力向上、怪我予防 |
PHIピラティスで学べる具体的な技術
そのため、PHIピラティスでは以下のような技術が学べます。ピラティスの形だけではなく、解剖学・運動学的に体の動きがみれるようになる、アスリートから高齢者まで幅広く対応が可能になる、エクササイズの強度や難易度の調整が臨機応変にできるようになる。
解剖学・運動学に基づいた指導技術
PHIピラティスのインストラクターは、単なる動きの模倣ではなく、なぜその動きが必要なのかを科学的に理解した上で指導を行います。
- 筋肉の起始停止と作用の理解
- 関節の可動域と制限因子の把握
- 動作パターンの分析能力
- 代償動作の識別と修正技術
個別評価と運動処方技術
PHIピラティスのマットⅠ・Ⅱインストラクターとして一番重要となってくるのは、実際にエクササイズが出来るようになることでなく、クライアントの姿勢によって、より効果的なエクササイズを見極め、医科学的根拠に基づき、オーダーメイドで運動処方を行えることです。
これにより、以下のような高度な指導技術を身につけることができます:
- 姿勢評価技術 – 静的・動的姿勢の分析
- 機能評価技術 – 筋力、柔軟性、バランスの評価
- エクササイズ選択技術 – 個人に最適な運動の選定
- 進行管理技術 – 段階的な負荷調整とプログレッション
他のピラティス流派との比較
ピラティスには多くの流派が存在しますが、PHIピラティスの特徴をより明確にするため、主要流派との比較を見てみましょう。
流派名 | 創始者の背景 | 主な特徴 | 対象者 |
---|---|---|---|
PHIピラティス | 理学療法士・アスレチックトレーナー | 医療とフィットネスの融合 | リハビリ~アスリート |
BASIピラティス | ピラティス研究者 | 伝統的メソッドの継承 | 一般~上級者 |
STOTTピラティス | 理学療法士・ダンサー | リハビリテーション重視 | リハビリ~一般 |
Peakピラティス | フィットネス専門家 | 教育システムの体系化 | 一般~指導者育成 |
PHIピラティス独自の強み
PHIピラティスのメソッドは理学療法士によって開発されたため、リハビリテーションの現場で培われた専門的な医療的視点がエクササイズに反映されていることが、大きな特徴として挙げられます。
他の流派と比較した時のPHIピラティスの最大の差別化要因は以下の点です:
- 創始者が現役の理学療法士である点
- 実際の理学療法クリニックでの実践に基づく点
- 学術研究による科学的根拠がある点
- PMA(Pilates Method Alliance)認定を受けている点
PHIピラティスの具体的な効果と事例
姿勢改善による身体的効果
また、脊柱のゆがみから引き起こされる肩こり、腰痛、股関節の痛みにもピラティスが効果的であると述べています。クリスティン氏は自身の理学療法クリニックを運営しながら、ピラティスのエクササイズを用いてリハビリからパフォーマンスアップまで様々な方のサポートを行なっています。
PHIピラティスによる具体的な身体的効果は以下の通りです:
- 肩こりの改善 – 胸椎可動性向上と肩甲骨周囲筋バランス改善
- 腰痛の軽減 – 体幹安定性向上と腰椎-骨盤アライメント改善
- 股関節痛の改善 – 股関節周囲筋の柔軟性と筋力バランス改善
- 姿勢の改善 – 全身アライメントの最適化
運動学習による長期的効果
PHIピラティスでは、エクササイズを行いながら理想的な姿勢、理想的な身体の動きを学び、それを身体に覚えさせていく「運動学習」を行います。日常の姿勢の改善していくため、筋肉のバランスの乱れで生じるさまざまな不調の改善にも効果的です。
この運動学習のアプローチにより、以下のような長期的な効果が期待できます:
- 無意識レベルでの姿勢改善
- 日常動作パターンの最適化
- 痛みの根本的な改善
- 再発予防効果
実際の成功事例
PHIピラティスを受講した後から教えて頂いた知識を指導に取り入れておりますが、今までの指導から格段に制度が変わった実感があります。肩こりや腰痛などの主訴に対して解剖学的な目的を意識しながら指導ができるので、クライアント様のフォームをみるポイントも変わり、PHIピラティス受講前だった以前と比べると根拠のある的確な指導が出来ていると実感しております。
この体験談からも分かるように、PHIピラティスを学ぶことで、指導者自身の指導の質が大幅に向上することが確認されています。
PHIピラティス資格取得システム
基本コースの構成
初めて「PHI Pilates インストラクターコース」を受講する方は、最初に必ず基本コースの『マットⅠ/Ⅱ』または『リフォーマーⅠ』のどちらかを受講します。
PHIピラティスの資格取得システムは8つの基本コースで構成されています:
- マットⅠ/Ⅱ – 基礎となるマットピラティス
- プロップス(Props) – 小道具を使った指導
- バレル(Barrel) – 脊柱矯正に特化した器具
- チェア(Chair) – 座位でのエクササイズ
- リフォーマーⅠ – 基本的なマシンピラティス
- リフォーマーⅡ – 応用的なマシンピラティス
- リフォーマーⅢ – 上級者向けマシンピラティス
- タワー(Tower) – 壁面設置型器具
マットピラティスの特徴
PHI Pilates Mat Ⅰ/Ⅱコースは、ピラティスの世界では難易度が最も高いマットピラティスの指導方法を学びます。一言で言うと「オールマイティー」です。行うのが最も難しいマットピラティスのエクササイズですが、場所は問いません。
PHIピラティスのマットコースは、最も難易度が高いとされながらも、最も汎用性の高いスキルを身につけることができます。
資格取得後のキャリアパス
8つの基本コースのうち、リフォーマーⅢコース以外の7つのインストラクターコースを修了すると、認定ピラティス指導者の受験資格を得られる、8つの基本コースをすべてを修了すると、PHIピラティス認定コンプリヘンシブインストラクターとして活動でき、PHIピラティス認定マスタートレーナーの受験資格が得られる。
段階的なキャリアアップが可能な構造になっており、長期的な成長をサポートしています。
PHIピラティスに向いている人・向いていない人
向いている人の特徴
機能解剖、運動学に基づいた安全で効果の高いピラティスを学びたい!ピラティスで動きやパフォーマンス、姿勢を変化させ「結果を出せる」ようになりたい。リハビリテーション(運動療法)や、アスリートのパフォーマンス向上としてピラティスを取り入れたい。
PHIピラティスが特に適している人は以下のような方です:
- 医療従事者(理学療法士、作業療法士、看護師など)
- トレーナー・インストラクターで専門性を高めたい方
- 慢性的な痛みに悩んでいる方
- 姿勢改善を本格的に取り組みたい方
- 科学的根拠に基づいた指導を学びたい方
向いていない可能性がある人
一方で、以下のような方にはPHIピラティスは向いていない可能性があります:
- 軽く運動したいだけの方
- 理論よりも感覚を重視したい方
- 短期間で資格取得したい方
- 費用を最小限に抑えたい方
PHIピラティスの現在と未来
国際的な認知と普及
PHIピラティスは、国際的な非営利組織であるPMA(Pilates Method Alliance)に認定された資格団体であり、PHIピラティスのメソッドは学術的にも証明されています。
PMAの認定団体で資格を取得すると、「世界標準に合致した指導技術を備えている」という証明になり、海外で活動したい方や国際的な認知度を重視する方にとっては強い味方となるでしょう。
医療分野での更なる活用
PHIピラティスは、その医療的な背景から、今後さらに以下の分野での活用が期待されています:
- 予防医学の分野での健康維持・増進
- 高齢者医療でのフレイル予防
- スポーツ医学でのパフォーマンス向上と怪我予防
- 産業医学での職業性疾患予防
まとめ:PHIピラティスで得られる価値
PHIピラティスは、単なるエクササイズ指導を超えた、医療とフィットネスの融合による革新的なアプローチを提供する流派です。
創始者クリスティン・ロマニ・ルビィ氏の理学療法士としての専門性と、30年以上にわたる学術研究に基づいた科学的根拠により、以下の価値を提供しています:
- 個人に最適化された運動処方による効果的な結果
- 解剖学・運動学に基づいた安全で確実な指導技術
- リハビリからアスリートまで対応可能な幅広い適用性
- 姿勢改善による根本的な身体の問題解決
- 国際的に認知された資格によるキャリア展開
ピラティスを通じて「結果を出したい」と考えている方、医療的な視点からアプローチしたい方、そして長期的なキャリア形成を考えている方にとって、PHIピラティスは非常に価値のある選択肢といえるでしょう。
あなたのピラティスジャーニーにおいて、PHIピラティスが新たな可能性を開く扉となることを願っています。まずは体験レッスンや説明会に参加して、この革新的なメソッドの魅力を実際に感じてみてください。
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